近年、大谷翔平選手の目覚ましい活躍が話題になっていますね。
それとともに「MVP」という言葉をよく耳にするようになったと思います。
MVPとは「most valuable player」略で、主に野球での最優秀選手のことを言い、
リーグの公式戦で最も活躍し、チームに貢献した選手に与えられる名誉ある賞です。
当然、「誰が一番か」を決めるわけですから、選手の能力を測るための「指標」が必要になりますよね。
意外に思うかも知れませんが、MVPを決める際に重要視される指標は日本とアメリカで大きく異なります。
日本では旧指標(打率、打率、打点、奪三振率、防御率、勝利数など)によって選手を評価することが多く、実際に表彰も行われています。
打点王、最優秀防御率などなど・・・。
しかし、旧指標には試合状況やチーム全体の能力といった、本人の能力とは無関係な要素が少なからず含まれています。
よって、野球の本場であるアメリカでは、「旧来の指標ではプレイヤーの正確な能力を測ることができていない」とされ、新たな指標開発が行われるようになりました。
そして現在、アメリカで広く普及した考え方が「セイバーメトリクス」です。
本記事では、セイバーメトリクスとはどのようなものなのか、新指標にはどのようなものがあるのかについてわかりやすく解説していこうと思います。
ぜひ最後までお付き合いください!
セイバーメトリクスとは
セイバーメトリクス(Sabermetrics)は、アメリカ野球学会の略称SABR(Society for American Baseball Research)と測定基準 (metrics) を組み合わせた造語です。
主に、データを統計学的に選手の能力やチームの強さなどを客観的に分析し、チーム経営や戦略に役立てる手法や考え方を言います。
現在のメジャーリーグでは、セイバーメトリクスによって与えられた新指標である「セイバーメトリクス指標」を元にMVPを決めています。
次に、このセイバーメトリクス指標を大きく「打者指標」「守備指標」「投手指標」「総合指標」の4つに分類し、それぞれで最も有名な指標を紹介していきます!
【打者指標】OPS
OPS (On-base plus Slugging)とは、打撃能力を客観的に評価するための指標で、日本では「オーピーエス」と呼ばれます。
直訳は「出塁+長打」で、その名の通り、出塁率+長打率で計算される指標です。
OPSは日本でも普及しつつあるね。
OPSが高い選手は、塁に出る確率が高く、二塁打以上の長打を打つ確率も高い打者です。
もちろん、その数値が高いほど、チームに貢献していると判断されます。
数値と評価の対応関係は以下の通りです。
OPS | 評価 |
.9000以上 | 非常に素晴らしい |
.8334 – .8999 | 非常に良い |
.7667 – .8333 | 良い |
.7000 – .7666 | 並 |
.6334 – .6999 | 平均以下 |
.5667 – .6333 | 悪い |
.5666以下 | 非常に悪い |
2022年10月7日 (金) 19:20 UTC
ちなみに、2021年にMVPを獲得した大谷翔平選手のOPSは「0.965」でした。
打者としてのレベルも高すぎる・・・。
OPS指標の欠点に、長打率のほうが数値に反映されやすい傾向にあること、盗塁が考慮されていない点があります。
実際、2001年にMVPを獲得したイチロー選手のOPSは「0.838」と少し物足りない数値となっていますね。
アベレージヒッターにはちょっと厳しい指標かも?
そこで、打者の実力を簡単に測る際は、打率に加えてOPSも確認すると良いでしょう。
【投手指標】WHIP
WHIP (Walks plus Hits per Inning Pitched)とは、投手能力(安定感)を客観的に評価するための指標で、日本では「ウィップ」と呼ばれます。
メジャーリーグにおいては防御率とともに公式採用されている一方で、日本プロ野球会への普及(採用)は進んでいません。
直訳は「1イニングあたりの与四球・被安打数の合計」で、名の通り「(与四球数 + 被安打数)÷ 投球回数」で計算されます。
したがって、「1イニングあたりに何人のランナーを出すか」を見ることができる指標と言い換えることもでき、0に近いほど優秀とされます。
数値と評価の対応関係は以下の通りです。
WHIP | 評価 |
1.00 | 素晴らしい |
1.10 | 非常に良い |
1.25 | 平均以上 |
1.32 | 平均 |
1.40 | 平均以下 |
1.50 | 悪い |
1.60 | 非常に悪い |
2022年10月6日 (木) 23:49 UTC
ちなみに、2021年に、サイ・ヤング賞2位に輝いたダルビッシュ有選手のWHIPは「1.09」でした。
三振も奪えて四球も少ない安定感のある投手だとわかるね。
WHIPの問題点には、死球が計算に含まれない点、長打と単打の評価が同じである点、野手の守備(ファインプレー・エラーなど)に左右されやすい点などが挙げられます。
WHIPはまだまだ課題の多い指標です。
それでも、投手の安定感を数値で見ることができる点は非常に有り難いですね笑
【守備指標】UZR
UZR (Ultimate Zone Rating)とは、選手の守備能力を客観的に評価するための指標で、「アルティメット・ゾーン・レーティング」と呼ばれます。
同一ポジションにおける選手の平均的な守備数値を複雑な計算によって算出し、相対評価することで、「個々の選手が1シーズンに失点を何点防いだか・招いたか」を見ることができる指標です。
数値と評価の対応関係は以下の通りです。
UZR | 評価 |
15 | ゴールデングラブ級 |
10 | 優秀 |
5 | 平均以上 |
0 | 平均 |
-5 | 平均以下 |
-10 | 悪い |
-15 | 非常に悪い |
2021年10月26日 (火) 13:44 UTC
UZRには、捕手の評価が難しいという問題点があります。
一方で、旧指標では守備能力を上手く測ることができなかったため、現在のアメリカでは重宝されています。
ゴールデングラブ賞にも関わってくる指標ですので、守備が上手い選手がいればUZRを確認してみるのも面白いと思いますよ。
【総合指標】WAR
WAR (Wins Above Replacement)とは、選手能力を総合的かつ客観的に評価するための指標で、日本では「ウォー」と呼ばれます。
直訳は「代替可能選手を上回る勝利数」で、同じポジションの代替可能な選手に比べて、どれだけの勝利数に貢献したかを見ることができる指標です。
例えば、WARが+5だった場合、その選手が出場すると「そのポジションにおける代替可能選手が出場するより、チームが5回多く勝てる」ということです。
逆に、勝利への貢献度が小さければ、WARの値も小さくなり、マイナスになることもあります。
WARの計算方法は非常に難解なので、「全指標の合計」とした結論ベースの理解で十分だと思います。
なお、ここでいう代替選手は、全球団が容易に獲得できるレベルの実力の選手を基準にしています。
したがって、基準は全球団で統一されたものであり、チーム状況に応じてWARが左右されることがない点も理解しておきましょう!
数値と評価の対応関係は以下の通りです。
WAR | 評価 |
6.0以上 | MVP級 |
5.0-6.0 | スーパースター |
4.0-5.0 | オールスター |
3.0-4.0 | 好選手 |
2.0-3.0 | レギュラー |
1.0-2.0 | 先発メンバー |
1.0以下 | 控え |
0未満 | リプレイスメント(代替可能) |
2021年10月26日 (木) 13:51 UTC
ちなみに、2021年の大谷翔平選手のWARは、打者として「5.1」、投手として「3.0」、合計「8.1」を記録し、メジャー全体でトップの値でした。
また、2001年のイチロー選手のWARは「7.7」、2004年には驚異の「9.2」を記録しています。
MLBでこの数値は異次元ですね笑
一見、万能そうなWARにも問題点はあります。
それは「守備位置等のファクター補正にばらつきがありすぎる」ことです。
特に、大谷翔平選手のような二刀流選手をWARで評価することは難しいと言われています。
より正確な指標にするために、各種ファクター補正の見直しを進めてほしいところです。
いずれは二刀流の価値も正確に測れる指標になることを期待しています!
終わりに一言
本記事では、セイバーメトリクスとはどのようなものなのか、そして新指標にはどのようなものがあるのかについて解説しました。
いかがったでしょうか?
とっつきにくい指標もありますが、意味をしっかり理解することができれば、より野球を楽しめるようになると思います。
今後はぜひ、セイバーメトリクス指標をもとに、大谷翔平選手などメジャーに挑戦する日本人選手の表彰を予想してみてくださいね。
最後まで見ていただきありがとうございました!