皆さんは、数学科と物理学科についてどれぐらい知っていますか?
「数学・物理を専門的に学ぶところ」程度のイメージで終わっていませんか??
実際、数学科には「高校数学の延長だろう」程度の感覚で進学して、後悔している人がたくさんいます。
皆さんにはそうなってほしくないです・・・。
そこで、皆さんのイメージとリアルとのギャップを埋めるために、似て非なる「数学科」と「物理学科」の違いを3つの観点から解説し、その上で「どんな人が向いているのか」について言及したいと思います。
悩める進路選択の参考になれば幸いです。
では、早速参りましょう!
① 授業内容について
数学科
高校数学と大学数学は大きく異なります。
大学数学では、高校数学のように「効率よく問題を解く授業」ではなく、「ある定義・命題について厳密に議論する授業」をするのが一般的で、その内容は非常に抽象的なものが多く、理解することは困難を極めます。
例として、1回生で学ぶ「微分積分学」についてご紹介しましょう。
1回生の微分積分学では、主に極限に関する勉強をするのですが、高校数学のような代入して計算するだけの極限とは全く異なり、収束・発散について数学的論法で厳密に定義し、命題について議論するという内容です。
数学的論法では、「ε-σ論法」や「ε-δ論法」なんかが有名です。
大学数学を知る上で手っ取り早いと思いますので、ぜひ調べてみてくださいね。
物理学科
高校物理との違いは、事象・現象を「大きさ」ではなく「ベクトル」で考えるようになることです。
ほとんどの科目で、有名な物理式を微分積分やベクトル解析などの数学的手法で導出するといった授業を行います。
授業内容については、高校数学・化学・物理がある程度習熟している人であれば、理解が困難だと感じることはほとんど無いと思います。
ただ、統計力学や量子力学のように難しい科目もありますので、そういった科目については適宜勉強することをおすすめします。
② 大学生活の違いについて
数学科
実験や卒論を課さない大学が多いため、大学に拘束される時間が少なく、比較的自由な大学生活を送ることができます。
しかし、前述の通り大学数学は抽象的かつ厳密で理解が難しいものがほとんどです。
そのため、「拘束される時間が少ない=勉強しなくて良い」というわけではなく、単位を取るためには大学の授業分に加えて、家での勉強もある程度必要になってきます。
また、あくまで教授は教育者ではなく研究者ですので、教えるのが正直下手です・・・。(加えて数学科の教授は内向的な人が多い)
ですから、教え合える友達を作りましょう。孤立してはいけません。
数学科の授業の成績は「出席点0%、テスト100%」など偏ったものが多いため、友達同士で教え合ったり、情報を共有することが他学科よりも重要になります。
少しテーマとズレましたが、まとめると、数学科の大学生活は比較的自由であるため、時間の使い方も自分次第といった感じです。
もちろん、バイトとサークルの両立も可能です。
ただし、授業以外での自主勉強や友達同士での教え合い、情報共有が他学科以上に重要になることも覚えておきましょう。
物理学科
物理学科は数学科と異なり、実験があるため大学に拘束される時間が多く、「必修科目・実験を受ける → レポート作成 → 提出」というサイクルを淡々とこなす大学生活になります。
やや忙しいですが、バイトとサークルの両立も可能です。
一方で、単位をしっかり取っていけば忙しさは徐々に軽減されていくので、趣味に充てる時間も作れます。
メリハリをつけることが得意な人は、楽しい大学生活が送れると思いますよ!
【コラム】教職科目について
数学科・物理学科では、将来教員として働くために必要な「教員免許」を取得することができます。
もちろん、何もせずに貰えるものではありません。
教員免許を取得するには、「教職科目」という卒業単位(卒業するのに必要な単位数)に含まれない授業を必要分履修し、教育実習に行く必要があります。
これが地味に大変です。
一般に、中免(中学校の教員免許)の方が必要な教職科目が多く、物理学科で中免を取ろうとするとかなりハードな大学生活になります。
一方で、数学科は比較的暇ですから中免を取ることをオススメします。(中免を取れば高免も貰えます)
物理学科の人で将来教師になりたいという人は非常に大変ですが、中免を取りましょう。
中免を取っておくと中学校・高校ともに採用試験に受かりやすくなりますからね。
③ 就職先について
数学科
数学科の主な就職先は「教育業界」「金融業界」「IT業界」です。
特に、教育業界は就職先の大部分を占めるといっても過言ではないです。
数学の勉強もしつつ教師を目指したいという人には数学科をおすすめします。
次に、金融業界についてです。
「アクチュアリー」と「クオンツ」を数学科におすすめしているサイトがありましたので、これについて少し解説します。
アクチュアリーとは保険数理を扱い、保険関係の金融商品の保険料・保険金を大数の法則と収支相等の原則に基づいて計算・決定する職業です。
大学3回生レベルの数学(統計・確率論)を主に使いますが、5科目あるアクチュアリーの資格を取る必要があり、それが非常に難しいです。(合格まで数年かかることも)
その分、給料がずば抜けて良く、夢のある仕事です。
次に、クオンツについてです。
クオンツとは金融工学を扱い、数学的に金融商品の作成・評価・取引を行う職業です。
カッコいいですよね。僕も憧れてます笑
ただ、必要な数学(確率論)のレベルは院卒以上な上に、採用枠も非常に狭き門となっています。
アクチュアリー同様、給料もずば抜けています。
どちらも成れるまで長い道のりになる職業ですが、知っておいて損はないと思いますよ。
最後に、IT業界についてですね。
マーケティングを行う上で、データ統計・分析は必須です。
その中で、数学科の数学的思考は活かされやすい上に、数値解析やシミュレーション工学といった、応用数学分野の授業からプログラムも学ぶことができるため、意外と相性の良い業界となっています。
物理学科
物理学科の主な就職先は「教育業界」「メーカー業界」「IT業界」「金融業界」「コンサル業界」と幅広いです。
意外に就職が難しいとされる物理学科ですが、学生のポテンシャルを買っている企業も多いですから、十分準備して就活すれば全く問題ないと思います。
研究室によっては大学院・就職先への斡旋もあるので、進路にはあまり困らない学科だと言えるでしょう。
【必見】向いている人は?
数学科
以下の3点を満たす人は向いています。
- 深く粘り強く考えられる人
- 高校数学でも特に「定義・命題の証明」が好きな人
- 抽象的な議論が好きな人
逆に、すぐに解答を欲しがる人、計算すること・問題を解くことが好きな人、抽象的な考え方が苦手な人は向いていません。
特に、高校数学が得意だからという理由で入学すると痛い目に遭います。
高校数学が得意で物理が好きな人は物理学科に行くことをオススメしますよ。
物理学科
以下の3点を満たす人は向いています。
- 高校数学・化学・物理が好きな人
- 物理に関するトピックに何か一つでも興味がある人
- 実験が苦にならない人
物理学科の勉強には、高校数学・化学・物理が広く関わってきますので、これらが好きで得意だという人にはもってこいの学科です。
一方で、手を汚すことや単純作業が嫌いな人は向いていない気がします。
実験とは切り離せない学科ですし、実験とはそういうものですからね・・・。
ただ、4回生まで我慢すれば理論系の卒業研究もできます。
ですから、理論物理は好きだけど実験は嫌いだという人も、進路の一つとして考えてみてくださいね。
終わりに
本記事では、数学科・物理学科の違いを3つの観点から解説し、向いている人について言及してみました。
数学科・物理学科についてのイメージとリアルとのギャップは埋まったでしょうか?
他にも質問などありましたら、本サイトの「お問い合わせ」からお気軽にご連絡ください。
繰り返しますが、イメージだけで進路選択をすると必ず痛い目に遭いますので、学部学科の理解や進路研究はしっかり行うようにしましょう!
最後になりますが、物理学科の進路研究に役立つ記事を書いておりますので、興味がある方はぜひこちらも御覧ください ^^
では、以上で終わりたいと思います。
最後まで見ていただきありがとうございました!